いい取材・いい文章とは?なりたい姿に近づくにはあいまいさの定義から
いい文章とは、どういうものだと思いますか?
ストレスなく読める、気づきがある、読後にいい感情が持てる。さまざまな定義があるかと思います。
「いい文章かどうかは、読み手の感じ方次第」
そのとおりです。けれどその先に、向上はあるのでしょうか。
先日、とあるメディアに取材していただきました。
立場が変わると見方が変わる。と言いますが、他の人が書いた原稿を見て、いい取材・いい文章とは何かを改めて考えました。
今週は私なりに定義にした「いい取材・いい文章とは何か」をシェアします。
【目次】
1️⃣いい取材・いい記事の3つの特徴
2️⃣取材対象者が喜んでくれる
3️⃣テーマが明確である
4️⃣「他人からどう見えるか」への配慮がある
5️⃣本質を知るには異なるものが必要
いい取材・いい記事の3つの特徴
私はライターとしていろんな方のお話をうかがっていますが、同時に新聞、テレビ、ラジオ、Webメディアなどの取材対象者・素材となったこともあります。
どうだ!と言いたいわけではありません。
一般的に有名な媒体には優秀な記者も多いのではと思いますが、成果物の良し悪しは必ずしも知名度で決まるものでもない、という印象です。私自身、「よかった!」と思うものもあれば「人に知られたくない」と思うものまでいろいろありました。
私自身「よかった!」と思う取材には、次の3つの要素がそろっていました。
1.取材対象者が喜んでくれる
取材がはじめての方は、インタビューして文章にするだけで喜んでもらえます。喜んでいただくのは、それほど難しくないでしょう。
難易度が高いのは、取材慣れしている方です。何度も同じような質問をされているので、内心うんざりしています。
まだどこにも話していない話を引き出すには、「お?」と思ってもらわなくてはいけません。ですから、事前の下調べが重要です。参考までに、私が普段やっていることをシェアしますね。
取材前にすることー下調べ
経歴などの基本情報はもちろん、メディア掲載実績はチェックしておきます。ざっと目をとおして、それぞれの主題を確認します。
取材対象者がSNSをしている人であれば、SNSに目を通しておくのがおすすめです。SNSの投稿頻度や投稿内容を見れば、その人の興味関心がリアルタイムでわかります。話のきっかけになりますし、もしかするとそこから話題が広がることもあるかもしれません。
下調べで既出の情報を確認したら、何が足りないか、どこを深堀りするとおもしろくなるかを考えます。誰もが知る著名人でない限り、ある程度は既出の情報を盛り込む必要があると私は考えていますが、それを取材時に聞くのは野暮というもの。
時間がもったいないので、取材時はその人にしか答えられない質問をするのがいいと思います。
取材時ー取材中〜納品までは相手のファンになる
他で話していないことを話してもらうため、私は相手のファンになります。たとえ話の内容が同意できないことであっても、です。
なぜなら、主役は取材対象者であって、書き手ではないからです。
人は自分に興味を持つ人に好感を持つもの。少し話せば、下調べしたかどうかは相手に伝わってしまいます。きちんと準備してくれたんだな、と思えれば気持ちよく話をしてくれるでしょう。
一方、わからないのにわかったふりをするのは厳禁です。
自分をよく見せたい気持ちは、誰もが持っているものですよね。でも自分のその場の自尊心を守ることと、いい原稿を書くことのどちらが大事ですか。
わからないことは書けません。肝心のところが抜け落ちていたり、つじつまの合わないことを書いてしまったりしますからね。たとえその場はごまかせても、原稿に表れます。
わからないことがあったら私は正直に「わからないので教えてください」「それって、こういう意味ですか?」と聞いています。
いちファンとしてその人を理解するつもりで話を聞けば、「この人は自分のことをわかってくれる」「考えが整理された」と思ってもらえるでしょう。
これは態度の問題ではありますが、シビアな話です。書き手が取材対象者の本音を知る機会はほとんどありません。しかしダメ判定されたら確実に、次はないのです。
2.テーマが明確である
わかりやすい文章には明確な主題があります。取材中はいろんな話をします。
おもしろい話が聞けると全部盛り込みたくなりますが、いい原稿はその主題につながるエピソードだけが取捨選択されているものです。
よくある悪い例は、話したことを話した順番で、まとめただけの文章ですね。
これは、少し前まで私も人のことを言えませんでした。「順番に書くな」との指摘があっても、何が悪いのかわからなかったです。
でも、読み手になってわかりました。全部載せした文章は主題が複数あるので、ぼんやりしているのです。
この対策は、他の人の書いた文章をたくさん読むことではないでしょうか。自分の中にいい文章と悪い文章の見本をたくさんストックしていくうちに、だんだんよくなっていくと私は思っています。
そうしたことを通じて私が目指しているのは、はじめて読んだ人もわかる文章です。そのため、あえてすべてを盛り込まず、不要なものをカットしたり組み替えたりすることもあります。
3.他人から「どう見えるか」への配慮がある
インタビューの素材は取材対象者です。インタビュー記事は直接話法を使うことも多いですね。ところが、話したこと「そのまま」だとマズいことがあります。
以前、上阪徹さんのブックライター塾で講師の方が「ライターは話し手の年齢や、立場も考えなくてはならない」とおっしゃっていました。
直接話法は臨場感を出すために、そのまま書くのが基本です。しかし人は話しているとき、適切な言い回しをしているとは限りません。気持ちよく話していればいるほど、そうですよね。
ですから、必要に応じてニュアンスの近い別の言葉に翻訳することもライターの大切な仕事といえるでしょう。
翻訳が不十分なまま記事が世に出ると、取材対象者を知らない人がその記事を読んだとき、ネガティブな印象を抱くことがあります。
ほとんどの場合、記事の目的は「この人、こんなおもしろいことをしているよ」と世の中に知ってもらうことではないでしょうか。にも関わらず、言葉選びやエピソード選びが不適切だと、逆効果になってしまうこともあるのです。それでは目的達成には遠く及ばないでしょう。
文章を読めば「書き手」がわかる
誰かが「写真には、被写体とカメラマンの関係が表れる」と言っていましたが、文章も同じだと私は思います。
文章を読めば、聞き手がその話をどのくらい理解したのか、言葉の選び方で聞き手が話し手にどのような感情を持っているかまで、うかがい知ることができるのです。
活躍しているライター・編集者は口をそろえて「文章力で押し切るな」と言います。「文章がうまい人の方が問題が見えにくく、かえって深刻だ」と。
ブックライター塾に参加していた当時は「そういうこともあるのか」くらいにしか思っていませんでした。ところが先日、講義の意味が腹落ちしました。
基本的に文章の編集権はライターにあると私は考えています。しかし、そのまま公開することは、私だけでなく媒体にとってもネガティブだと感じました。そのため、その記事は構成から考え直してもらうよう伝えました。
本質を知るには異なるものが必要
今週はいい取材・いい文章とは何かを私なりに定義してみました。
「いい」という言葉はあいまいで、結局は「人ぞれぞれ」です。しかし、よりいい取材・いい文章に近づくには、定義からはじまるのだと私は思います。
そのためには、いい例だけでなく悪い例も必要です。その2つがあることで、それぞれの特徴が見えてくるからです。
ゴールが見えていなければ、どこを目指せばいいかもわかりません。ありたい姿に近づくための定義づけができたという点で、今回の出来事はいい経験だったと思っています。
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