【インタビュー】”手間抜き”は手抜きじゃない。2児の母が食品の会社を立ち上げたわけ

不定期で配信するインタビューのテーマは、地方のワークスタイルや子育て世代の働き方です。素敵な働き方を実践する方々にお話をうかがいました。
のりー 2022.08.14
誰でも

今週は不定期に配信するインタビュー記事です。

子どもの誕生を機に地方に移住し、未経験からライターをはじめた私にとって「地方のワークスタイル」はとても興味のあるテーマです。

本来、働くことと暮らしは分離されたものではなく、全部をひっくるめて「ライフ(人生)」と私は思っています。

ところが、必ずしもそうではない。

もしかすると、それはたまたま私がお仕事させていただいている企業の地域に偏りがあるせいなのかもしれませんが、みんなそこを目指したいの?と思うケースも少なくありません。

私も少し背伸びすればできるかも。

いろんな人のワークスタイルを垣間見ることで、一人ひとりが自分にちょうどいい暮らしができる世の中になればいいなと思っています。

今回も地方で働き、子育する素敵な女性にお話をうかがいました。

***

外部サービスの活用は手抜きではなく、手間抜き。「子育てをもっと楽しく」を掲げる福岡の食品会社がある。2021年2月に立ち上げた株式会社こさじ(以下、こさじ)だ。

同社の主力商品は野菜100%のピューレ。2022年3月、クラウドファンディングサービス「Makuake」で試験販売を開始した。野菜ピューレは子育て世代の共感を得て383%でファンディングに成功している。

代表を務めるのは1歳と3歳の子を持つ、梶尾直子さん。

小さな子どもがいながらにして会社を立ち上げるのは相当なエネルギーが必要だったはずだ。彼女を動かしたのは何だったのだろう。

働くことは楽しいし、あきらめたくなかった

梶尾さん

梶尾さん

―会社を立ち上げようと思ったきっかけは何でしたか?

以前は会社員をしていたのですが、2人目の子どもが生まれたときに会社員としての働き方を続けることが難しいと思ったからです。

これまでは、福岡のスタートアップ企業で働いていました。1人目のときは早く復職したいと思っていたくらいでしたが、2人の子どもを抱えて動きの早いスタートアップに適応するのは難しいと感じたんですね。

でも、働くことは楽しいし、あきらめたくなかった

ちょうどそのとき、福岡県の起業伴走支援プログラムを知って参加することになりました。大分の実家が食品加工会社をしているので、製造工場と生産者の方とのつながりもあります。

とれたての野菜を急速冷凍できる環境があるので、そのリソースを活用できたらいいなと考えるようになったんです。

お母さんはもっとラクしていい

九州のとれたての野菜を使った野菜ピューレ。急速冷凍されているので、色鮮やかで栄養価も高い

九州のとれたての野菜を使った野菜ピューレ。急速冷凍されているので、色鮮やかで栄養価も高い

―ご実家が食品加工の事業をされているんですね。そこからどのようにして野菜ピューレの通販にたどりついたのでしょう?

私自身、子育てを経験して一番大変だと思ったのは食事の準備でした。食事は1日に複数回ありますよね。

こさじ立ち上げ前は、福岡県の起業伴走支援プログラムで40人くらいのお母さんたちにヒアリングしたのですが、そこで印象に残ったのは、多くのお母さんが自炊しているということです。

専業主婦のお母さんだけじゃなくて、働いているお母さんもですよ。もっと、中食や宅食にみんなが頼れたらいいんじゃないかって思ったんです。

私自身、産後に寝不足や貧血といった体調の変化を経験して、頼れるところは頼った方がいいと感じました。配達サービスも利用しましたが油ものや肉が多くて、毎日は続けられないな、と。

買い物をラクにしてくれるサービスすでに世の中にありますが、子育てと家事でアップアップのお母さんが気軽に使えるものの選択肢がもっと増えてもいいなと感じていました。

野菜ピューレは自炊でもなく、レトルトでもない。その中間のような感じです。カップラーメンを食べるときにちょい足ししたり、焼きそばの具にしてみたり。パンケーキやオムレツに入れても手軽に栄養が摂れます。

カップラーメンを食べていても、罪悪感が薄まるかもしれません。乳児用食品の規格も適用になっているので、もちろん離乳食としても使えます。

野菜のおいしさを味わえるピューレなら野菜嫌いも防げそうだ

野菜のおいしさを味わえるピューレなら野菜嫌いも防げそうだ

―自炊にもいろんなレベルがあります。時短を優先したい人と、栄養をしっかり摂りたい人とでは少し層が違うように感じるのですが、野菜ピューレはどんな人に食べてもらいたいですか?

難しいですね……野菜ピューレのペルソナは料理があまり得意ではない自分自身を想定していました。手間はできるだけ省きたいけど、手は抜きたくない。野菜と栄養は、きちんと摂りたい人でしょうか。

野菜をピューレにするのって結構手間がかかりますよね。ピューレになることで他のものと混ざりやすくなるので、とりあえずあと一品欲しいなという人に使ってもらいたいです。

野菜ピューレはテストマーケティング的な立ち位置として販売しました。「手間抜き」の旗艦商品として細々とでも続けていきたいと思います。今後はグラノーラなど常温保存できてもっと手軽に、そのまま食べられるようなものも作っていきたいです。

手間を省いて、家族の時間をつくりたい

―手抜きじゃなくて、手間抜きなんですね。子育て世代にとって食事の手間を省けるとどんないいことがあると思いますか?

少しでも余力を生み出して、その時間を家族との時間に使って欲しいです。手作りは素敵なことです。でも、そこを頑張りすぎて余裕がなくなってしまっては元も子もありません。余裕があれば、お母さんはもっとハッピーになれると思います。

そうすれば、家族みんなが幸せになれると信じています。

親になって子どもの教育のありかたに関心を持つようになったのですが、子どもに何を残せるかを考えたとき、私自身がやりたいことをやりながら、社会とのつながりを持っている姿を見せたいと思うようになりました。それが子どもの教育にもなるんじゃないかな、と。

これからのこさじは「子育てをもっと楽しく」から派生して食以外のサービスもリリースできればと考えています。野菜ピューレの通販はその第一弾。みなさんの幸せにつながれば、うれしいです。

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