子ども用アニメと自己肯定感の関係:しまじろうとパディントンから
アニメ版くまのパディントンを見ました。
正確には、子どもが見ているのを横でチラ見した、と言った方がいいかもしれません。
ご存じない方にお伝えすると、パディントンはイギリスの児童文学です。本やアニメを見たことはなくても、キャラクターは知っている人は多いのではないでしょうか。
私もキャラクターは知っていましたが、パディントンを見たのはこれがはじめてでした。
※「書く+αで生きていく。ライターの歩き方」は、横浜出身・天草在住の筆者が地方に移住し未経験からライター業などの複業を営みながら、人生100年時代を楽しく、自分らしく生きるために必要な考え方やスキルアップのヒントなどをお届けしています。
【目次】
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子どもがいらんことをするのも、大人がイライラするのも当たり前
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”ありのまま”を描くパディントン
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”よい子”を描くしまじろう
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子ども向けアニメはその社会の”理想”を描いている
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幸福感の低さは若い世代の死因に表れている
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環境に適応する者が生き残る
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今週のおすすめ本
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ニュースレターが本になりました
子どもがいらんことをするのも、大人がイライラするのも当たり前
目にしたのはこんなシーンです。
買い物から帰って来た隣家のおじさんを手伝おうと、荷物を家に運び入れるパディントン。ところが、買い物袋からバラバラと荷物を落としてしまいます。キッチンに到着してようやく荷物を落としていることに気づき、拾おうとしますが、足元のケチャップチューブに気づきません。
お約束どおり、踏みしめたチューブからケチャップが勢いよく飛び出します。壁にべったりと赤い汚れが付きました。
あわてて拭き取ろうと、戸棚からペーパータオルを取り出そうとするものの、棚から転げ落ち、床に広がります。
ちょうどそのとき、おじさんがキッチンに入って来ます。
「なんだこれは!?」
「お手伝いをしようと思ったんです」
「何が手伝いなものか。うちをぐちゃぐちゃにしただけじゃないか。もう二度とうちの前に現れるな」
「うちの前がダメなら、家の中ならいいですか?」
「どちらもダメに決まってる!さぁさ、どっか行ってくれ」
パディントンの侵入を防ぐため、おじさんは家のドアや窓一面にNo Enter No Bearと張り紙していました。
”ありのまま”を描くパディントン
私はこのアニメを見て驚きました。お手伝いをしようとしてむしろ足手まといになっている様子が描かれていること、そしてパディントン(子ども)に怒る大人が描かれていることに対してです。
しかも、家の中ならいいですか?などと屁理屈までこねているではありませんか!
現実世界で子どもが「お手伝い」をしようとして失敗することはよくあります。お手伝いのつもりが、かえって大変になるので、おじさんのようにイライラすることも少なくありません。
実際、私もよくそうなっています。カッとして「何もしないで!」と言うものの、その直後、「せっかくやる気になっていたのにな」と自己嫌悪を陥ります。子育て経験のある人は、そういうことの繰り返しなのではないでしょうか。
ところで、なぜ自己嫌悪を感じるのでしょう。
翻って、日本のアニメを見てみましょう。
”よい子”を描くしまじろう
同じくうちの子が好きな「しましまとらのしまじろう」です。
アニメの主人公はしまじろうというトラの子ども。もう何十年も某子ども用通信教育の看板キャラクターですが、正直なところ、私はなぜこのキャラクターが支持されているのかわかりません。
なぜなら、未就学児にしてはものわかりが良すぎるからです。共感できない、といった方がいいかもしれません。
それは、ほかのキャラクターも同じです。うさぎのみみりんも、ねこのニャッキーも、オウムのトリッピーもみんなよい子すぎます。
できすぎているのは、子どもだけでなく、大人も同様。しまじろうのお母さんは、いつも穏やかで、声を張り上げることは決してありません。
先のパディントンのようにもし、しまじろうがお手伝いをしたら、きっとしまじろうは守備よくやり遂げるでしょう。仮に失敗しても、屁理屈をこねることはなく、素直に謝るに違いありません。
そしてお母さんも「いいのよ、しまじろう。お手伝いしようと思ってくれたのよね。」と言うでしょう。
しまじろうを見るたびに、私はある種の不快感を覚えていました。なぜなのかわからなかったのですが、パディントンを見てわかりました。
しまじろうが描くのは、模範的な子どもと親です。普通なら起こるであろうことや、自然に湧き起こる感情は描かれていません。
子ども向けアニメはその社会の”理想”を描いている
アニメやドラマは、社会を映す鏡だと私は思っています。
どんな社会にしたいのか。その構成員はどのような人がふさわしいのか。それを描くのが教育なわけですが、その刷り込みは未就学児からはじまっているのだなぁと感じます。
子どもの頃から”模範的”な像ばかり見ていたら、当たり前の基準はそこになっていくでしょう。
ところが、みんながそうできるわけではありません。子どもの手伝いなんて裏目に出ることの方が多いし、それに対して大人がイライラするのは自然なことなのです。
”失敗してはいけない”という刷り込み
失敗ばかりで周囲を困らせるキャラクターといえば、ドラえもんののび太や、クレヨンしんちゃんのしんのすけあたりが思い浮かびます。
けれども、のび太もしんのすけは、決して正統派キャラクターとは言えないのではないでしょうか。子どもを怒鳴りつけるのび太の母や、みさえも、ちょっと変わった人物として描かれています。
この描き方が曲者です。つまり、”正解”はしまじろうで、それ以外は「困った人」なのだというメッセージを、私たちは受け続けているからです。
こうしたことの繰り返しによって、私たちの中に理想像が出来上がります。一方、現実はそうではありません。理想と現実のギャップを感じて、終わりのない自己嫌悪ループに入ってしまう人は多いのではと思いました。
パディントンが生まれたイギリスでは、子どもが「いらんこと」をして、失敗するのは当たり前。そして周りの大人がイライラするのも当たり前、というメッセージを伝えているようにも感じます。
ただ、パディントンも最後はさらなるアクシデントを経ておじさんと仲直りしてていました。しっかりフォローがあるところは、やはり児童向けの作品らしいですね。ぶつかるのは当たり前。でも、最後は修復して、うまくやっていこうというメッセージなのだと思います。
幸福感の低さは若い世代の死因に表れている
日本は「幸福感」の低い国だと言われて久しくなりました。それは39歳以下の若い世代の死因にも表れています。死因のトップは自殺です。
亡くなった人の16%以上を自殺を占める国は、世界でも例をみないと言われています。
これはすでに大きな社会問題となっていて、テレビでこんな特集が組まれるくらいです。少子高齢化で若い世代が貴重になったからこそ、問題として顕在化していることもあるでしょう。
私たちの価値観形成の一端を担うのは、幼少期からのアニメや、教育です。
このような話をすると、海外は進んでいて、日本は遅れてるという話かと思うかもしれないが、そうではありません。
環境に適応する者が生き残る
大陸でつながっているヨーロッパは、昔から多くの民族が入り乱れ、戦争を繰り返してきました。当地の価値観は、そうした歴史に揉まれて形成されたのでしょう。
多様性についても、積極的に認めたというよりは、認めないことによるコストの方が高かったのかもしれません。
一説によると、日本の法律や社会制度はヨーロッパと50年のタイムラグがあるそうです。
日本は周囲を海で囲まれた小さな国というイメージですが、実は世界で1億人以上の人口を擁する国は少数派。上から数えた方が早い人口規模だったので、これまでの日本では、わさわざノイズを取り入れる必要がありませんでした。
国内に大きなマーケットがあり、明確な”多数派”が存在していたからです。
しかし、年間出生数が80万人を切ったいま、そうもいかなくなるでしょう。
少子高齢化は暗い話でしかないと思う人も多いかもしれませんが、いい面もあると私は思っています。
それは、より現実に即した価値観を受け入れるインセンティブが働くことです。
富国強兵時代の和魂洋才ではなく、内側からも変わっていくでしょう。変化は痛みを伴います。これまでは抵抗も大きかったでしょうが、これからは変わっていくに違いありません。
好きか嫌いか、いいか悪いかではありません。そうしないと生き残っていけないのですから。
するとアニメの描かれ方も変わっていくでしょう。これからの世代は、きっと生きやすくなります。
●今週のおすすめ本
教科書には載ってない経済を学べます。
アフリカから強国が生まれなかったのは、決してアフリカの人が劣っていたとか、ヨーロッパ人が優れていたからではない。というエピソードが印象的でした。
優劣や良し悪しではないものの考え方にふれたい人におすすめ!
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また来週、お会いしましょう。
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