ライターの未来予想。なぜ書き手に読む力が必要なのか

ありとあらゆる情報が消費されるいま、どうやって印象に残る文章を書けるか?ライターなら一度は考えてみたことがあるでしょう。だから、テクニックが必要だ。そう考える人は多いと思います。でも、それは正しい方向性なのでしょうか。
のりー 2022.06.19
誰でも

ありとあらゆる情報が消費されるいま、どうやって印象に残る文章を書けるか?

ライターなら一度は考えてみたことがあるでしょう。

情報伝達や記録のために生まれた文字ですが、事実を伝えるだけの文章は何も残らない。

読んだ人が嬉しくなったり、悲しくなったり、新しい発見があると感じてくれたり。自分が書いた文章が見知らぬ誰かの行動のきっかけとなることほど、嬉しいことはありません

だから、テクニックが必要だ。

そう考える人は多いと思います。でも、それは正しい方向性なのでしょうか。

良い書き手であるためには、書くこと以上に「読む」ことが大切だ。

そう主張するのは、ジャーナリストの佐々木俊尚さんです。

私もライターをはじめたばかりの頃は、文章術に関する本を大量に読みました。誰が読んでもストレスなく、リズム感のある文章を書く細かなテクニックはいろいろあります。

そして本や雑誌、webメディアのタイトルや見出しには、見た人の興味を引く強い言葉があふれています。

たしかにはじめて見た人に記事を読んでもらったり、本や雑誌を手にとってもらったりするにはそうした強い言葉が必要なのでしょう。

コピーライティングなんかはまさにそれですね。

スキルや技術があれば、よいことはたくさんあります。でもライターがステップアップするには、そして長く仕事をしていくために身につけるべきなのはスキルや技術ではない。そう考えるようになりました。

では、何が必要か。

スキル・技術より「言いたいこと」が重要と考える理由

それは書き手である自分自身が「言いたいこと」です。本来、商業ライターに求められるのは自分の言いたいことではありません。

求められるのは「相手」が伝えたいことを理解し、それに沿って記事の構成を考え、言語化することです。

いわゆるクライアントワークですね。「相手の意図を組むことの方が大事だから、自分の考えはなくていい」そう思うかもしれません。

しかし長期的な視点で見ると単体では成り立たない仕事、顧客の求めがあってはじめて成り立つ仕事しかない状態は、危険だと私は考えています。

自分でコントロールできる余地が少なく、相手に生殺与奪を握られることになるからです。

ライターの場合、クライアントワークでも記名記事なら実績になるのでよいですよね。でも、その仕事をしたことがどこにも出ない性質の仕事はどうでしょうか?

AIに代替される?将来が危ないライティングの仕事とは

たとえば、ライティングで最も大きな市場と言って過言ではないSEOライティング。

にも関わらず、私がSEO案件を引き受けるのをやめたのは向いていないのもありますが、それ以上に将来の可能性を感じないことが理由でした。

「”●●”というキーワードで1位を取りました!」も実績になりえますが、ランキングは時間やGoogleのルールとともに変わりますよね。その実績にどの程度の意味があるのか、私は疑問に感じています。

SEOが悪いわけではありません。SEOを知っていれば自分でビジネスするときも役立ちます。SEOコンサルの道が開ける、とはいえおそらくそれはライターというより、コンサルタントが向いている人でしょう。

SEOライティングについては、仕事を発注する側の企業にも問題があるのかもしれません。「読んでおもしろい記事」「ためになる記事」というより記事数重視、検索上位に入ることを重視しています。そして、分析が見ているのはあくまで過去の結果です。未来予想はしていないと言っていい。

そんな仕事に未来はあるといえるでしょうか。おそらくSEOライティングは、近い将来AIにとって代わられると思います。

だからこそ、書き手としてできるだけ長く仕事をしていくには、自分が言いたいことを持つことが必要です。

「なぜ英語を勉強するの?」という質問とライターの共通点

私は学生時代、英語の教員になろうとぼんやり思っていました。英語の先生になるなら、TOEICや英検で高得点を取れた方がいいだろう。そう思っていたので、せっせと勉強に励んでいたのです(結局、教員にはならなかったわけですが)。

ところがある日、外国人の先生から「なぜ英語を勉強しているのか?」という質問をされました。それに対して、たぶん私は「英語でスムーズにコミュニケーションをとるため」みたいなことを答えたと思います。それに対する返答はいまでも忘れられません。

「それなら、コンテンツがなくてはね。コミュニケーションにビッグワードは不要だから」

ビッグワードとは、難しい言葉のことです。たとえば、「コミュニケーションをとる」と言えばいいところを、わざわざ「意思疎通を図る」と表現するのはビッグワードですね。

このときの私は「あなたの会話には中身がない」と言われたような気がして、気分が悪くなりました。

ただ、それは的を射た指摘だと思います。そして、それは母語である日本語も同じではないでしょうか。

よい書き手であるために、読む

前回、ライターのタイプ分けをしましたが、これからの時代は、分野横断的な書き手が強いと思います。

私はこういう人です!これに強みがあります!と言えることはとても大切です。

なので、主戦場でしっかり踏ん張りながら、自分自身を出せる場に遠征しにいくのがよさそうです。

冒頭の佐々木俊尚さんの本に戻ります。

この本はジャーナリストである佐々木俊尚さんの情報収集術を詳らかにしたものですが、それ以上に勉強になると思ったのは、なぜ情報収集が必要なのかについて書かれていることです。

情報はそれ自体には価値はありません。使うためにあります。

ライターが情報収集を行うのはアウトプットするためです。

でも、既存記事をなぞっただけの記事に意味はありません。読む力は情報を元に自分なりの世界観を作り、外側の事象と自分との接点を表現するために必要だ。そのように私は読みました。

私は佐々木さんのマネをして、早速、毎日ニュースサイトのRSSを使って、気になった記事をTwitterでシェアすることにしました。

毎日ニュースの見出しをチェックしてコメントする習慣を続けていれば、大なり小なりライティングにも活きてくると思います。

情報収集術のハウツー本としてもおもしろいので、興味があればぜひ読んでみてくださいね!

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